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東京高等裁判所 昭和54年(ネ)843号 判決

控訴人

霧生紀和子

外三名

右控訴人訴訟代理人

今村甲一

宍倉秀男

被控訴人

日本道路公団

右代表者総裁

高橋国一郎

右指定代理人

藤村啓

中山哲一

主文

本件各控訴を棄却する。

控訴費用は、控訴人らの負担とする。

事実

控訴人ら代理人は、請求を減縮して、「原判決を取消す。被控訴人は、控訴人霧生紀和子に対し金一、四四九万三、三三二円、その余の控訴人らに対し各金九六六万二、二二一円及び右各金員に対する昭和五二年四月一二日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求め、被控訴代理人は、主文第一、二項同旨の判決並びに敗訴の場合に備えて担保を条件とする仮執行免脱宣言を求めた。

当事者双方の主張並びに証拠の関係は、左に付加、訂正するか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

(原判決の訂正)

原判決六枚目裏七行目から同七枚目表八行目までを、次のとおり訂正する。

よつて、被控訴人に対し、控訴人紀和子は金二、四四九万三、三三二円の内金一、四四九万三、三三二円、その余の控訴人らは各金一、六三二万八、八八八円の内金九六六万二、二二一円及び右各金員に対する本件訴状送達の日の翌日である昭和五二年四月一二日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(主張)

一  控訴人ら代理人

本件の如き事故を防止するためには、本件道路の中央分離帯に設置されているガードレールの高さを現状よりも高くし、右分離帯の幅員を可能な限り広くするなどの措置を講じ、もつて反対車線からの飛来物を阻止するに足りる設備をしなければならない。

換言すれば、本件道路には、これを通行する者に対し損害の発生を防止するに足りる設備が存しなかつたのであるから、右道路の設置管理につき瑕疵の存したことは明らかである。

二  被控訴代理人

控訴人らの右主張事実を争う。

理由

一  当裁判所は、控訴人らの本訴請求をいずれも失当として棄却すべきものと判断するが、その理由は、左に訂正するほか、原判決がその理由において説示するところと同一であるから、右説示を引用する。

(一)  〈省略〉

(二)  同一三枚目裏一一行目から同一四枚目裏三行目までを、次のように改める。

ところで、国家賠償法第二条第一項にいう営造物の設置又は管理に瑕疵があつたかどうかは、当該営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的、個別的に判断さるべきものであるところ、引用にかかる原判決の認定した事実によれば、本件道路の中央分離帯は、右道路を通行する車両の車線を往復の方向に分離するために設置され、被控訴人によつて管理されているものであつて、その高さ、幅、その他の構造に徴し、その目的、用法及び利用状況等からみてその安全性に欠けるところはないものというべきであり、しかも、本件事故は、訴外森山宗男が森山車を運転して本件道路の上り車線のうちの左側車線を進行中、左側後輪の外側タイヤが脱落して転つて中央分離帯の中央にある道路面からの高さ約1.2メートルの鉄製ガードレールの上を乗り越えて反対車線に飛び込み、折柄右反対車線を進行中の原告車に激突して惹起されたものであつて、本件道路の管理者たる被控訴人において、通常予測することのできない出来事であつたということができる。そうすると、本件道路につき、それが本来具有すべき安全性に欠けるところがあつたということはできないし、また、反対車線からの飛来物によつて生じた本件事故につき、被控訴人において管理者としての責を負うべき理由はなく、もとより被控訴人に危険防止義務を尽さなかつたとして過失を認めることもできない。

二よつて、本件各控訴は理由がないから、いずれもこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条、第九三条を適用し、主文のとおり判決する。

(安倍正三 長久保武 加藤一隆)

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